※捨て子として育てた事情

 それは、主人公の父親のためであった。父、遠山たか夫は、ある日、柄の悪い連中に人が乱暴されているのを見かけ、たか夫は止めに入った。そのとき、相手の持っていたナイフで、逆に相手を殺してしまったというのだ。

 誰もが正当防衛を信じていた。しかし、運が悪くその相手というのが町の有力者の息子で、そのために、たか夫は刑務所に入れられてしまったのだ。そして彼は、そのまま獄中で息を引き取ったのだという。

 ユリは、殺人者の妻として、苦労することになった。そして、死んだ相手の仲間に嫌がらせをされ、最後には放火までされてしまった。

 殺人者の息子という過去を消し去ること、それが、主人公が捨て子として育てられた事情だったのだ。そのために、主人公は嘘の名字が与えられていた。ユリは家出してきた手前、火事のことも家には連絡を入れなかった。火事については、明らかに放火だったにもかかわらず、またもや圧力で、新聞にすら載らなかったのだという。主人公の正義感は父親譲りらしい。主人公は、父を、誇りに思うのであった。


※主人公の推理

…母さんが大切にしていた日本人形…、それが後継者の印なのだろうか?


※紙切れの文章

 …あなたがこれを見つけるときがいつか必ずやってくると、母さんは思っていました。今すぐこれを持って明神村の綾城という家を、訪ねてみなさい。そこには、今までとは全く違ったあなたの人生が待っているの。

 その家にはキクって言う名前のあなたのおばあちゃんがいます。きっとあなたの力になってくれるわ。

 でも…、そのことがあなたにとって幸せなことなのかどうか、母さんにはわからない…。でも、これはあなたの運命なの。そしてあなたの一度きりの人生だから最後は…、自分で決めなさい。

 母さんの命は、もう長くないでしょう。あなたと一緒にいてあげられない、母さんを許してちょうだい…。そんな母さんがあなたに残してあげられる、たった一つのものです。

-ユリ-



※タバコ入れの紙の言葉の解説

「うま進み、うさぎ進みて、とり開く、卍の中の印のぞまん。」

それぞれの動物が、昔の日本で方角の表記になっている。

東=卯…うさぎ
西=酉…とり
南=午…うま
北=子…ねずみ


 地図を見ると卍型になっており、中央に空間がある。その空間の周りの壁には、それぞれの方角の動物の絵が描かれている。その壁を言葉の順番に、つまり、「午→卯」の順に押し(絵に向かって進む)、最後に酉を押すと、壁が開き、中に入れる。
地図



※天地の告白

「 遺言書を作る…、そう言いだしたのがキクにとって運の尽きさ。私はその日を待っていたんだからね。そのとき、キクは殺人のヒントまで教えてくれたよ。一服つけなきゃ眠れないってな…。完治も二郎も仕事のことで話があると言えば、どこへでもすぐ来てくれたよ。青酸タバコ…、綾城家の奴らにはおあつらえ向きの方法だろ?

 ヤクザから金を借りていたアキラは、借金の肩代わりを申し出ると、喜んでキクのタバコ入れに、青酸タバコを忍ばせてくれたよ。おまけに、骨董泥棒などという、ケチなまねをしてくれたおかげで、完治殺しまでひっかぶってもらった。そのアキラが…、キクの死体を始末しなきゃまずいと言い出した。二人でキクを海に捨て、墓を元に戻しに行ったとき、後ろから墓石でガツン!奴の指紋だらけの土蔵のカギをいただいた。今頃墓の下で、社長になった夢でも見ているさ。

 おかげで二郎の時も一人で骨を折ったよ。首吊りに見せかけるためにな。私とアキラが会っているのを見てしまったあずさは、何かを感づいたようだった。そして私を強請ろうとした…。よけいなことなど考えなければよかったものを…、おまけに禁煙中とは、あのバカが…、こんなキズまで付けやがって!

 さて、お次は君の話だ。ユリを調べているうち、すぐ君のことは分かったよ。私の罠にはまって、おまえはすぐ屋敷にやってきた。ご苦労なことさ。しばらく様子を見ようとしていたものを、アキラの奴が…、おまえを殺そうと崖へ呼び出した。それを知った私が、すぐに駆けつけてみると、おまえは海に浮かんでいた。あわてておまえを海から引き上げ調べてみれば、お守りなんて持っていない。その代わりにやけどの跡は確かめたがね…。その最中に息を吹き返したおまえは、幸か不幸か記憶を失っていた。だから私は一芝居打たなきゃならなくなった…。そうか…、おまえはお守りのことを知らなかったのか。」


























































































































後継者の印の在処

どぞう(土蔵)
























































































































※ブラウザの「戻る」ボタンでお戻り下さい。
HOME