三章 村人救出大作戦
※いったいさんの語り
突如、りんごの村に鬼が襲ってきた。鬼達はあたりに火を放ち、家々を壊し、逃げまどう人々に襲いかかっていく。そんな中、りんごは焼け落ちた家の破片が頭上に落ちてきて意識を失う。りんごはてっぺいの声で目を覚ます。彼は他の人は捕まったり遠く逃げていると告げると、鬼が追いかけてきたため逃げ去っていった。
庄屋の屋敷の前に行くと、ごろさくが隠れている。話しかけると、彼はおなかがすいて戻ってきてしまったらしい。彼は「鬼に捕まってしまった奴らはどうなってしまうんだろうな?」とつぶやき立ち去ってしまう。
もきちの家にはいると、人が隠れている。話しかけると、それはもきちであった。彼は村をでる前にもう一度家を見に来たのだという。
神社に行くと、本殿の前に2体の鬼がいる。吠えてみると、鬼は犬には無関心であることが分かる。しかし、本殿に入ろうとすると鬼に遮られてしまう。
再びもきちのところに行き、話を聞くと、鬼達は話し声を聞きつけて襲ってくるのだという。
おじいさんの家に戻ってくるが、誰もいない。にわとりや馬もいなくなっているようだった。
大通りへと向かう通路のところに、一羽のカラスがいる。話を聞くと、詳しいことはこの辺りにいる兄弟に聞いてくれと言われる。
庄屋の屋敷に行くと、またカラスがとまっている。鬼はどこから来たのかと聞くと、都より西から来ているという答えが返ってくる。都はすでに廃墟になっているらしい。
先ほどのカラスのところに行き、おじいさんとおばあさんについて尋ねると、彼は村を出ていった人の中か、捕まった連中と一緒にいるのではないかと言い、神社の方をくちばしでさした。
再び庄屋の屋敷のところのカラスのところに行き、神社で鬼達がなにをしているか訪ねると、彼は人の魂を抜く準備でもしているのではないかという。また、この通りに赤い腹当てをした変な人間が堂々と歩いていたという。
橋の方に行くと、金太郎がいる。彼はりんごを待っていたらしい。『彼が来ている』と金太郎は告げると、りんごを村はずれの橋の方へ送り出した。
橋のたもとに行くと、一人の男の子がいる。りんごが近づくと彼は持っていた袋から団子を一つ取り出し、りんごの前に置いた。「これ、やる」と言われるので、お腹の空いていたりんごは一口で食べてしまう。すると、不思議なことに疲れがスーと取れ、力と勇気がわいてくる。
男の子は「女の子見なかった?」と聞いてくる。どうやら旅の途中にはぐれてしまったらしい。りんごはその質問に対し、答えた。
「鬼なら見ましたよ。」
りんごは人間の言葉を発していた。驚く男の子。りんごはふとあの夏の日に聞いたひのえ様のお告げを思い出す。りんごは彼がいったいさんの言っていた男の子かと思い、尋ねると、彼もまたいったいさんを知っているという。
ひのえ様の力か、不思議なことに人の言葉を使えるようになったりんご。男の子に話しかけると、一緒に都に行かないかと誘われるが、りんごはおじいさん達を探していると言って断る。
覚悟を決めたりんごは、再び神社へと向かう。鬼に向かって勢いよく話しかけると、りんごの声とは気がつかない鬼はきょろきょろし出す。その隙に、中に入ろうとするがうまくいかない。もう一度話しかけようとするが、あまり近くで話すとばれてしまうので、一旦外に出る。そして外から鬼に向かって大声で呼びかけると、鬼はだまされて村の方へと行ってしまう。その隙に、りんごは本殿の中へと忍び込んだのだった。
本殿には鬼達がいた。
鬼に見つからず、本殿の奥に行くことに成功すると、そこにはあの憎らしい子供達がいる。おじいさん達はいないようだ。子供達はりんごに縄をほどくよう哀願してくる。りんごは子供達を見て、助けるかどうか考える。憎らしい子供達だったが、りんごは助けることにした。お礼を言う子供達に、りんごはおじいさん達のことを尋ねる。子供達はしゃべるりんごに驚くが、おじいさん達は山奥の隠里に無事に避難していると告げる。
りんごは安心し、子供達のためにおとりになるよう、大声で叫びながら外へと駆けだしていった。鬼はその声につられ走っていく。そして、りんごは鬼を表通りまで誘い出すことに成功したのだった。
子供達も逃げたと考えたりんごは、おじいさん達のところへ向かおうとする。そのとき、突然空に一つの星がきらめく。それはひのえ様だった。ひのえ様はりんごに、旅立ちの時が来たと告げる。
ひのえ様は、すでに災いを呼ぶものは解き放たれてしまい、隠里に潜んでいる人たちも安全ではないという。りんごに、彼が使命を持って生まれたことを告げ、あの男の子を助けるように言ってひのえ様は消えてしまう。
神社通りのカラスに鬼の行方を聞くと、また別の村に向かったようだという。
大通りのカラスにもう人はいないのかと聞くと、村はずれの橋に変な爺さんがいるという。
橋にやってくると、いったいさんがいる。いったいさんはりんごに、子供達が無事逃げおおせたと告げる。そして、りんごに改めてあの男に協力してくれるよう要請する。承諾すると、男の子が戻ってくるまで散歩していなさいと言って去っていく。
りんごは村の思い出をかみしめるよう、いろいろと見て回る。そして、おじいさんの家で感傷に浸った後、外に出ると、いったいさんの声が聞こえる。りんごは急いで橋へと向かった。
橋には夕日の中たたずむ男の子がいた。りんごは彼と一緒に都へと旅立っていくのだった…。