はじまりの森へ

<その2 大土ころび>



 先に行くと、大勢の土ころびがいる。そしてその真ん中に巨大な土ころびがいる。それを見て、思わず三人は逃げ出してしまった。

 下に行き、二人とこれからどうするか話し合う。小次郎はやっつけてしまおうと言うが、小紫が叱る。小紫はここにいても仕方がないと言う。まわりを見ると小次郎が声を上げる。話しかけると月が出てきたという。見ると、確かに月が雲間からのぞいている。主人公は二人に旅たちまでもう時間がないことを告げ、早く先に進もうと呼びかける。そしてもう一度土ころび達のところに向かったのだった。

 大土ころびを見ると、どうやら眠っているらしい。小次郎に、近づいてみようかと言うと、行ってこいと言われる。そして主人公は勇気を出して大土ころびに近づいていった。

 大土ころびを見るとやはり寝ているようである。試しにおそるおそるさわってみるが、反応はない、もう一度、今度は少し大胆にさわってみるが、ピクリともしない。そこで大きな声を出して二人を呼ぶ。二人はそろそろとやってくるが、突然びっくりした様子を見せる。それを見て主人公も振り返ると、なんと大土ころびは目を開けていたのだった。慌てて逃げ出す三人。しかし、それをみて、大土ころびは何かをしゃべる。それを聞き止めた小紫は、大土ころびの方に戻っていった。

 この大土ころびと本当に話せるのかどうか、二人と話した後、試しに話しかけてみることにする。しかし、反応はない。小紫に話しかけると、彼女の方から話しかけてくれると言う。小紫が話しかけると、大土ころびは「あや・・むら・・さき?」と反応を見せる。小紫に確認した後、小次郎に、この土ころびはあや紫様と会ったことがあるのかな、と聞くと、あや紫様のことは数百年前のことだから、そんなわけがないと言われる。

 小紫にもう少し話をしてもらうように頼むと、小紫は自分があや紫でないことを大土ころびに告げる。すると、大土ころびは、あや紫に似ていると告げる。小紫に確認した後、小次郎に話しかけると、本当にあや紫様にあったことがあるのかな、と聞いてくる。それに対し、主人公は千年生きると土ころびは人の言葉をしゃべれるようになると聞いたことを告げる。もっと小紫に話を聞いてもらうと、大土ころびはあや紫と友だちだと言い、あや紫をずっと待っているのだという。しかし、あや紫様がもう既に亡くなっていることを小紫に告げてもらうと、大土ころびは主人公達に「うそつき」と言って、再び目を閉じてしまう。かわいそうに思った主人公は、小紫と、何か慰めてやれることがないかと話し合う。

 その時、にわかにまわりが明るくなってくる。見ると、また月明かりが差し込んできたようだ。そのことを小紫に告げると、小次郎が、早く行こうと言ってくる。そこで、移動しようとすると、小紫が呼び止める。小紫は大土ころびのために笛を吹いてやりたいという。その言葉に、主人公は快く了承した。

 小紫が笛を吹くと、大土ころびが「あやむらさき・・?」と目を開く。その様子を見て、また誤解させてしまったと思った小紫は「やめようか?」と告げる。しかし、大土ころびはもっと聞かせて欲しいというので、小紫はもう一度、今度は長く笛を吹く。それを目を閉じてジッと聞き入る大土ころび。そしてしばらく後、大土ころびは「あやむらさき・・やっぱりかえってきた」と声を出す。そして、小紫の中に、あや紫がいると告げ、主人公のことも知っているという。むかし、あや紫と一緒にいた、そう言ってくる。そして、また風の山に行くのかと言い、連れていってくれると言う。喜んで移動しようとする小次郎に、主人公は「このことをあやかし達に告げないと旅立ってしまう」と指摘する。それに対して、主人公に行ってこいと言う小次郎。しかし、主人公はダメだと答える。人間の自分が行っても聞いてくれないと。そこで小次郎が帰ることになるが、帰り道が分からない。すると、一匹の土ころびが近寄ってくる。そして大土ころびは、その土ころびが送ってくれると言う。そして小次郎は、主人公に向かってこう言ったのだった。

「それじゃ姉ちゃんのこと頼むぞ!」

 その言葉で、二人が兄弟だったことに気がつく。確認すると、小紫は、姉を呼び捨てする困った弟、と言うし、小次郎は小次郎で、お転婆な姉で困る、と言う。そして小次郎は、主人公が小紫を好きだと言っていたことを捨てぜりふとして、あやしの里へと帰っていったのだった。

 お互い背を向け、照れる二人。そんな二人に、大土ころびは急ぐよう告げる。そして大土ころびは霧を操ると、風の山へと向かった。

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