<その2 川沿いの道>
川沿いを歩きながら、この方向であっているのかと尋ねると、少し遠回りになるが、崖を登らずにいけると言われる。女の子を見ていると、女の子に不思議がられる。川を渡ることになると言うので彼女にどうやって渡るのか尋ねると、着けば分かるという。ここで何をやっていたのか聞くと、言い伝えについて話をしてくれる。彼女は山の神様の言い伝えについて調べているのだという。山の神様はこの世のすべての森を作った神様らしい。そして、彼女はこのままだとここから出ていかなければならないのだという。その言葉に、主人公は引っ越しか何かと勘違いするが、どうもそうではないらしい。また、主人公が夏休みを利用してこちらに来て、夏祭りまでいると言っても、女の子には話が通じない。そのうちに、女の子は「森に入る」と言ってくる。その言葉に従い、二人は森へと入っていった。
森に入った主人公は、そのすごさに感嘆の声を上げる。自分の町には森がないと告げると、女の子が驚いて聞き返してくる。そこで、町のことや映画のことを話すと、女の子が興味を示す。映画について説明すると、どんな話が好きなのか聞かれる。そこで、ジャングルを探検する話だと答えるが、その話をしているうちに、この森にも危険な動物がいるのか心配になってくる。しかし、そういった大きな動物は今はもういないのだという。
森を少し進むと、草むらがなにやらざわめいている。もしかしたら危険な動物なのかもしれないと考え、主人公は女の子を守ろうと彼女の前に立つ。しかし、そのとたん、ざわめきはやんでしまう。女の子は最初怪訝そうな顔をしていたが、そのうち、主人公が自分を守ろうとしていたことに気がつく。その理由を尋ねてくる彼女に対して答えようとしていると、突然、目の前に竜巻が出現する。なすすべもなく吹き飛ばされる主人公。その竜巻に対し、女の子は声をかけた。
「小次郎! やめるのじゃ!」
その言葉が届いたのか、主人公は地面に落ちてくる。慌てて駆け寄る女の子。女の子は主人公がけがをしていることに気がつき、手当を始める。女の子を見ると、一生懸命手当しているのが分かる。女の子は自分の浴衣の裾を破り、包帯を作ってくれる。手当が終わり、主人公がさっきのことを尋ねるが、女の子は気のせいだと言う。
その時、再びホタルがやって来たのに気づく。そんな主人公の様子に、女の子はホタルが好きなのかと聞く。ここで「うん!」と答えると、女の子がもっと呼んでやると言う。そして「ほーっ ほーっ ほーたるこい」と声を出すと、たくさんのホタルが周りに集まってくる。感激した主人公は自分にもやり方を教えて欲しいと頼むが、女の子に「ひ・み・つ・じゃ」と言われてしまう。そして、この先に川を渡れる場所があるというので、ついていくことにした。
案内された先は、川の所々に石が見えている場所だった。どうやらここの石を飛び移って行くらしい。この石は所々滑るらしく、女の子の見本を見て、その通ったとおりに飛び移っていかなければならないらしい。
無事渡りきると、女の子にもうすぐ駅前に出ると言われる。しかし、主人公はその場に立ち止まっている。女の子が不思議に思って声をかけると、主人公はまた明日遊ぼうと、女の子に呼びかける。しかし、女の子はそれに答えなかった。ふたりはそのまま駅前へと向かっていった。林を抜けると、先ほど来た橋の手前にやってきた。辺りはすっかり夕暮れになっていた。橋の向こうを見ると、おじいさんがスクーターに乗ってやってくる。主人公が声を上げ、おじいさんは彼の元にやってくる。おじいさんに対し、主人公はこれまでのことを説明し、女の子のことを説明しようとするが、すでに女の子は姿を消していた。おじいさんはまた明日会えるだろうと言い、その言葉に従い、主人公はおじいさんの家に向かったのだった。
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